それは 互いの日常が 崩れ去る 音
■あなたの日常 〜崩壊〜
C・E70、今現在ナチュラルとコーディネーターとの戦いは激化の一途を辿っていた。
そんな中、やっとの事でもぎ取る事が出来た僅かながらの休暇を終えたムウ・ラ・フラガ。
そんな彼はアークエンジェルに入るや否や、艦長への報告もそこそこに、とある人物を探し始める。
「お〜い、坊主!」
探し始める事数十分、整備室でようやく栗色の髪を持つ目的の人物を見付けたフラガは彼に駆け寄った。
このアークエンジェルの生命線とも言えるモビルスーツ【ストライク】に搭乗するキラ・ヤマトである。
彼は、自分の仕事が一段落したのか、フラガの呼びかけに振り向いた。
「あぁ、フラガ大尉。
休暇はどうでした?」
キラの問いに、フラガは普段から余程の事が無い限り崩さない笑みを更にニンマリと深めた。
「その休暇でだな、面白いモン見付けたんだ」
「面白い物?」
何故それを僕に? と、首を傾げるキラにフラガは重みのある薄型の箱の様な物を手渡す。
「何ですか、これ?」
「休暇の時に闇市を見付けてな、買い物に立ち寄ってみたんだが・・・」
この少年キラは、軍の学校を出て正規の軍人になった訳ではない。
運悪く事故に巻き込まれ、成り行きで地球軍の軍服を着用する事になってしまった“元”一般学生である。
従って、軍の規律なんて殆ど知りようが無いのだが・・・
《 闇 市 》
その正規の軍人でない人間にだって分かる不穏な単語に、キラはヒクリと頬を引き攣らせる。
そもそも闇市は、正規のルートを使わずに物品の売買を行うものである。
取り扱う品には法外な価格を付けられたりするのは当たり前であり、それこそ普通に生活をしていればお目に掛かれない【商品】さえ扱われるという場所である。
そんな所に正規の軍人が買い物に・・・しかもそれを堂々と口外 ――――――
キラは頭痛がしてきた頭を押さえ、何とか声を絞り出した。
「フラガ大尉、正規の軍人が闇市に行くのは流石にまずいんじゃ・・・」
まずいんじゃ、所ではない、確実にまずいのである。
性格上、強く言うことができないキラはやんわりと注意を促したのだが、その程度でこの男、フラガが態度を改めるのなら彼の今迄行ってきた悪行の数々の内、半数以上は存在しなかったであろう。
【人の話を聞かない男】の代名詞であるその男は、さして気にした素振りも見せず、飄々とした態度を崩さない。
「まぁ、硬い事言いなさんなって。
言わなきゃばれないばれなーい。
おかげで珍しいモン見つけられたんだからさ。
そこをスライドさせて上蓋を開けてみな」
この人には何を言っても無駄だ ―――――
もはや諦めの境地に達したキラは、深い溜息を吐くと、気を取り直してフラガの指示通りに箱の側面に付いている突起物をスライドさせた。
言われた通りに蓋を開けると、蓋の裏側には黒い液晶の画面の様な物、自分の手前にはキーボードが並んでいる。
「え・・これって・・・!」
「パソコンに似ているだろう?
これを売った店主は価値なんて分かっちゃいないようだったが、たぶんこれは旧西暦時代の骨董品だ。
こんな保存のいい状態で残ってたのが奇跡だな。
俺も本でしかこういうのは見た事ないが・・・まぁ、面白いプログラムなんかが入ってないかと思ってさ。
優しいオニイサンからプログラムをいじるのが好きな部下へのお土産だ」
「あ、ありがとうございます」
「その代わり、起動する時は呼んでくれ。
俺としても興味深いからな」
ならば早速試してみよう、という事で話が纏まる。
初めて取り扱う物だし、もし何か起きてモビルスーツややモビルアーマーに被害が出たら大変だという事で、食堂に場所を移すことになった。
フラガとキラは机に先程の箱を乗せると椅子を並べて座る。
些か緊張した面持ちで起動スイッチらしきボタンを押す。
ウィーン、と小さいが、独特の機械音が響き、パッと黒い画面が白に変わる。
途端、突如として画面が発光しだす。
「な、何だ!?」
驚くのも無理はない。
自分の持っているパソコンの旧式(と思われる物)を起動させただけで何故こんな目に遭うのか。
もしや昔の人はこれを起動させる度にこんな目も眩む様な光と格闘していたのか。(んな訳ない)
それとも、これを売った店の者から紛い物を掴まされたか。
しかし驚愕するのはそれだけに留まらなかった。
ポシュンッ!
眩い光から目を庇いながら、キラとフラガは唐突に何かが発射される様な音を聞いた。
音の発生源は先程の旧式パソコン、そして発射した物体の軌道は音からして
――――― 上!
キラとフラガはバッと一斉に頭上を見上げる。
部屋の照明位置まで高く打ち上げられた為、下にいるキラとフラガからすると影になってそれが“何”かまでは分からない。
(人間!?)
しかし、かろうじてそれが人間だと確認すると、キラは慌てて受け止めようと走り出す。
重力に従って落下する体を落ちる前に受け止める事は、本来ならばかなり難しい部類に入る事だが、コーディネーターであるキラには然程難しい事ではない。
体を滑り込ませる様にして、その人間と思われるものを受け止める。
フウ、と安堵の息を吐くと、ヒュー♪ とフラガが称賛の口笛を鳴らした。
「・・・で、そいつ誰だか判るか?」
「い、いえ・・・で、でも・・・・・・」
髪が覆っているせいで顔は見えない。
しかもその髪は長く、キラの体にだけでなく床にも散らばっている。
しかも、その人物を抱えているキラの腕に伝わる柔らかな感触は ――――― 男では絶対に得られない物。
「・・・お、女の子・・・・・? の様です・・・・・・・・」
何故に疑問系?
フラガは心の中でツッコんだ。
――
あとがき ――――――
重力に従って落下する体
重力に・・・
重力・・・・・・・・
この話を書く上で一番詰まった所です。
一応、宇宙での話のつもりなので。
宇宙では空気抵抗が無いので、勢いつけて発射なんてされたらそのまま天井に『ゴイン!!』ですよね〜
さすがにそんな痛々しい出会いは勘弁願いたかったので、急遽先輩に相談。
流石ガンダムやロボットアニメの視聴歴が長い先輩、パパッと回答をくださいました。
『そういうところは、擬似重力が働いているんだよ〜』との事。
いやはや、勉強になりました。(それまでガンダム含めロボットアニメなどは全く見たことが無かった人間)
仕組みは全く解りませぬが・・・(殴)
ロケットの打ち上げを見ていると、未だ真空パックに詰められた食事やインスタント食品を使った食事風景しか見たことの無い管理人は、未だ『未来』を夢見きれていなかったようです(笑)
そして、出ましたキラ君の名(迷?)言、『お、女の子・・・?』(爆)
探せばどんどん出てくる粗ですが、生温い目で見守ってくだされば幸いです。
あ、早速発見。
今回名前変換なし・・・・・・ガフ
up:2006.8.14