すれ違いとは時に 笑いをも 生み出すものである (筆者談)
■ 邪魔もの
「さん」
その呼び掛けに一人の女性が立ち止まった。
ここ、雄大な湖にそびえ立つ古城【城】で彼女をそう呼ぶ人物は限られている。
というか、ぶっちゃけ一人しかいない。
バランスの執行者のちょっとした(どころではない)お茶目さんに巻き込まれた異世界の二人組。
振り返らずとも、自然に相手は判るというものだ。
「どうかしました?先輩」
先輩と呼ばれた人物が自分の横に並ぶのを待って、と呼ばれた人物は再び歩き出す。
「今日の夕飯なんだけどね、一緒に食べられないから、連絡しとこうと思って」
その言葉に、は首を傾げた。
「それは別に構いませんけど・・・誰かと食事ですか?」
「そ、それが・・・」
そう言い淀んだ彼女の頬が微かに朱く染まる。
「・・ま、まさか・・・ついにさんから食事のお誘いが・・・!?」
ちなみにとは、ここ、城でカリスマ性を遺憾無く発揮している解放軍のリーダーの名前である。
彼女が彼に憧れを抱いているのを知っているは、それはもう、諸手を挙げて喜んだ。
万歳三唱をしながら涙ぐむ勢いである。
しかし、の喜びも次の瞬間には、跡形も無く霧散する事になる。
「実は・・・ジャバさんと、リュウカンさんと、ヘリオンさんと食事しましょうって約束を取り付けて」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「本当はマクシミリアンさんとカイさんも誘ったんだけど・・・二人とも『まだ長生きしたいから』だって。
変だよねぇ? 二人ともまだまだ現役なのにねぇ?
でも本当に残念」
そう言って彼女は溜息をつく。
どうやら彼女の中で好みと萌えは違う所に位置するらしい。
「違うでしょぉぉぉぉう!?
先輩それ、誘う相手間違ってるからぁぁぁぁ!!」
は、彼女の襟を引っつかみ、ガックンガックン揺さ振る。
その目には、先程とは別の涙が浮かんでいたりする。
そして、そんな様子を遠目に見ていた別の二人組がいた。
「・・・やれやれ・・僕が君の視界に入るには、後何十年待たないといけないんだろうね」
紫の混じった緑のバンダナを巻いた片方の少年、が軽く溜息を吐いた。
「外見年齢の事言ってるんだから、紋章宿してる時点で無駄だって事にいい加減気付けば?」
相方の様子を見ながらもう片方の緑の法衣を纏った少年、ルックがサラリと毒を吐く。
「大体、アンタがもたついてるから老いぼれ如きに先を越されるんだよ」
その言葉に、は『おや』と思う。
いやにルックの口数が多い。
それに、普段『我関せず』な彼がやけにせっついてくるのも珍しい。
『ああ、なるほど』
思い当たる節があるは、ニヤリ、と唇の端を上げる。
「・・・・・何さ」
「いや? 今現在一緒に食事をする口実を探している食事一つ満足に誘えない無愛想で実はムッツリだったりする毒舌魔術士に愛の手を差し延べてあげましょうかね、なんて」
サラリと先程の仕返しを交えつつ、未だにガックンガックン揺さ振られ続けている自分の意中の人物の相方を見遣った。
「 ―――― っ、余計なお世話だよ」
普段大人ぶって子憎たらしい程のルックの始めて見る反応には一層笑みを深める。
「おや、俺は【今現在一緒に食事をする口実を探している食事一つ満足に誘えない無愛想で実はムッツリだったりする毒舌魔術士】とは言ったけど、それがルックの事だなんて一言も言ってないよ?
それとも、自分が【今現在一緒に食事をする口実を探している食事一つ満足に誘えない無愛想で実はムッツリだったりする毒舌魔術士】という自覚があるんだ?」
もうこれは軽くイジメが入っているとしか思えない。
の態度は【珍しい玩具を手に入れた、困った子供】そのものである。
「切り裂 ――――― 」
もともと気の長い方ではないルックの限界がくるのは予想通り早かった。
その辺りは付き合いの短いでも重々承知している。
なので、彼の反応も早かった。
「まあ待ちなって。
からかったお詫びと言ってはなんだけど ――――― 」
「・・・・・・やっぱりからかっていたのか。
やめてくれる、ストレスの捌け口なんかに僕を使うの」
日頃から解放軍のリーダーという重責を背負う事に加え、最近では意中の人の意外な趣味などが加わり、正に多種多様。
詰まる所、憂さが溜まっていたのだ。
それを証拠に、先程と違って幾分すっきりした表情をしている。
――― その程度で晴れるなら、やっすい憂さだね(作者)
―――――――― 冥府(ニッコリ)
「 ―――――― で、お詫びにいいこと教えてあげるよ。
さっきフリックが彼女に言ってたんだけど、『もし良かったら夕飯後に酒場で飲まないか?』だってさ」
勿論“彼女”とはルックの思い人の方を指す。
「・・・・・・・・・別に彼女が誰と食事をしてようがお酒を飲んでようが僕には関係 ――――― 」
「無いって言うなら、今度から彼女を食事に誘った男共を片っ端から手が滑ったフリをして攻撃紋章かます真似もやめるんだね」
「 ――――― あんたも人の事は言えないんじゃないの?」
「僕は彼女に話が行く前に喰い止めてるから。
まあ、彼女の方から行動を起こすと言うのは考えてなかったけど」
ニッコリと、心底ニッコリと、一片の後悔も顔に浮かべず、は言い放った。
「それに、ルックが言ったんだよ?」
―― もたついてるから先を越されるんだよ ―――――
「・・・・・もういい、時間の無駄だね」
そういうと、ルックは踵を返し、話題の中心だった彼女達とは反対の方向に去っていく。
補足しておくなら、ルックの足を進める先は、先程フリックが通り過ぎていった方向だったりする。
「やれやれ・・・若いねぇ」
そんなルックの様子を見て、は軽く肩を竦めた。
「でもこうなった以上、俺も悠長な事言ってられないかな」
そう呟くと、もまた、彼女達とは反対の、先程のルックとは違う通路へと足を向けた。
すると、そこに
シーナ が 現れた ! (ドラ○エ風に)
先方に彼女達を視界に捕らえたシーナは、飼い主を見つけた犬の如く、尻尾を振りながら猛ダッシュで走ってくる。
その姿を確認したは、スッ と無駄な無い一連の流れの様に、戸惑いもなく、彼の足元がくるであろう位置に棍を差し出す。
目の前の物にしか目が行っていなかったシーナはそれに気付く事無く、そのままの横を通り過ぎ、そのままの体勢で飛んで ―― 飛んで ―――― 飛んで ―――――― 飛んで ――――――――― ・・・・・・そのまま城砦の窓(らしき物)から飛び出し、の視界から完全に消える。
それを確認すると、はさして気にする素振りも見せず、まるで何事も無かったかの様に足を進めるのだった。
近い将来、不機嫌顔の魔術師と、解放軍のリーダーとが、彼らが思いを寄せる女性達を交え4人で食事をする光景が見られるかもしれない。
しかし、それよりも先に青雷の通り名を持ち、また【トラン一の不幸男】との異名を持つ青いバンダナを付けた男が1人、剣も紋章もオールマイティーに使える実力を持ち、また【トランの放蕩息子】の異名を持つ男が1人、合わせて2つのどざえもんがトラン湖で発見される日の方が近いのかもしれない ―――――
フリックとシーナに幸あれ。
―― いいわけ ―――――――
相互記念の『山さん』に捧げます。
え〜、“彼女”とか“相手”とか代名詞のオンパレードで解り辛かったらごめんなさい。
『日頃お世話になっている先輩に相互リンク記念に夢小説を理解してもらおう!』をコンセプトに作成したブツがいつの間にか一周年記念小説も兼ねていたりするから世の中ってわからない・・・(それはお前が小説を書かんからだ/殴)
『ハンドルネームだろうが実名だろうが出されようモンなら自分は悶え死ぬ!!』との先輩からのお達しにより、結果、代名詞のオンパレードになってしまいました・・・
まぁ、要はカップリング的に坊×先輩、ルック×自分でお楽しみいただけたらな〜と思います。
後、よっぽどのフリークさんでないとわからないと思うので追記しておきますが、小説中に書いた名前の方は、ほぼご高齢・・・(それってジジコン、ババコン・・・殴)
まぁ、つまり先輩の萌えはご高齢者=坊ちゃんにとっての目の上のたんこぶ・・・
ちなみに、マクシミリアンさんとカイさんは坊ちゃんの気持ちに気付いているので、若いモンに譲ってやろう、という感じで。
では、最後に一言。
ご め ん な さ い (いろんな意味で)
up:2008.2.7